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幻の尖閣切手 領土教育

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      やってみよう! 作ってみよう!
          授業づくりJAPAN

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領土教育「幻の尖閣切手」
琉球政府郵政庁職員たちの
      知られざる気概の物語


私たちの本部である【授業づくりJAPANの「日本人を育てる授業」】で、横浜の小学校教諭・安達先生の授業「尖閣はいかにして日本の領土となったか」が紹介されています。
(→リンク先をどうぞ)

今回は、この素晴らしい授業を補足する資料編を掲載します。読み物資料です。
工夫すれば「道徳」の授業にもなると思います。
「愛国心・愛郷心」の徳目でいかがでしょうか。


では、尖閣諸島をめぐる沖縄男児の感動の物語をどうぞ。

■ 不思議な切手 ■

海洋シリーズ第3集切手『海と海鳥と島』

◎ 発問 ◎
切手に注目してください。
1.何が描かれていますか?
  疑問に思うことはありますか?
2.どんな場所ですか?
3.鳥の名前は何だと思いますか?


『この切手は、1972年4月14日、祖国復帰直前の沖縄で発行された海洋シリーズ第3集の『海と海鳥と島』という切手です。
切手にはこの島がどこなのか、海鳥の名前は何なのかまったく示されていません。
どうしてでしょうか???』

【読み物資料】

この島がどこなのか長年の謎でしたが、沖縄県石垣市の尖閣諸島を研究する国吉真古(まさふる)氏の聞き取り調査によって、尖閣諸島と判明しました。

実をいうと、描かれている鳥は「アホウドリ」です。
アホウドリは伊豆諸島の鳥島と沖縄の尖閣諸島でのみ繁殖が確認されている鳥なのです。

沖縄の尖閣諸島と伊豆諸島の鳥島でのみ繁殖が確認されているアホウドリ

沖縄の海でアホウドリが生息する島といえば、尖閣諸島以外にあり得ません。
この琉球切手は、わが国固有の領土である尖閣諸島をテーマにした唯一の切手です。


切手の発行は国家の意思を表すことがあります。

青く美しい海に浮かぶ尖閣諸島。
その南小島の切り立った断崖でアホウドリが飛翔し、戯れている姿を描いた「尖閣切手」。
この切手は、尖閣諸島が日本の沖縄に属していることを明確に主張しています

尖閣切手は、沖縄の祖国復帰(5月15日)の目前、昭和47年(1972年)4月14日に発行されました。
琉球政府郵政庁の職員たちが、この時期に発行に踏み切った理由は何だったのでしょうか。
この切手が日の目を見るまでには、職員たちの知られざる苦労とそれをはねのける強い意志が存在したのです。
わが国の領土を守らんとする揺るぎない決心で極秘のプロジェクトを遂行した職員たちの気概の物語を紹介しましょう。

            ◆◆◆

昭和20年(1945年)、大東亜戦争に敗れた日本は連合国(GHQ)に占領されました。
苦難の占領期を終え、昭和27年(1952年)4月28日にわが国は独立を回復しますが、沖縄県はアメリカの直接統治下に置かれました。
当然、尖閣諸島も沖縄の1部としてアメリカの施政権下にあります。

沖縄の郵政事業は昭和23年(1948年)に始まります。
はじめは無料だった郵便配達が有料制になり、「琉球郵便切手」が生まれました。
沖縄の名だたる画家たちが原画を描き、南国風のデザインと鮮やかな色彩で切手コレクターの間で人気を博します。
「沖縄美術の珠玉」と称されたほどです。
日本への復帰で琉球郵便が廃止になるまで、261種を発行しました。

■ 台湾・中国、突如の領有権主張 ■

1960年代、折から石油資源の枯渇が危惧されるようになりました。
そこで、世界各地で新たな油田を発見しようと調査が進められていました。
昭和44年(1969年)のことです。
国際連合のアジア極東経済委員会による海洋調査で、尖閣諸島の周辺にはイラクの埋蔵量に匹敵するほどの大量の石油が存在すると報告されたのです。

尖閣諸島は、明治28年(1895年)1月14日に正式にわが国の領土に編入されました。
明治18年(1885年)以降、日本政府が綿密な現地調査を行なった結果、無人島であり、かつ、清国(中国)の支配が及んでいないことを確認した上での閣議決定です。
尖閣諸島がわが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いようがありません。

ところが、尖閣諸島周辺に大量の石油が埋蔵されていることが判明すると、海域を接する台湾の国民党政府と中国は、突如、領有権を主張しはじめたのです。
明けて、昭和45年(1970年)、尖閣諸島をめぐる状況はますます緊迫していきました。
200以上もの市町村や経済団体によって「尖閣を守る会」が組織され、大規模な運動がはじまりました。

これを受けて、琉球政府は尖閣諸島の「領土宣言」を発し、琉球立法院も「尖閣防衛」の決議をしています。
琉球政府通産局の砂川局長は、琉球政府が権限を持っている間に尖閣周辺の石油鉱業権を許可したいと、「尖閣開発KK」の創設に奔走しました。

一方、沖縄返還にむけての日米協議は、尖閣諸島の帰属をめぐって紛糾しました。
なぜなら、米国政府が尖閣を返還協定内に含めることを渋ったからです。
日本側は米国の態度に怒りました。
沖縄開発庁の山中定則長官らが尽力して、最終的には無事に返還されることになりました。

そして、ついに昭和46年(1971年)6月、「沖縄返還協定」が調印の運びとなり、翌年5月に沖縄県が祖国に復帰することが決定しました。
ところが、この協定調印を挟んで、4月には台湾の国民政府が、12月には中国が尖閣諸島の領有権を正式に表明したのです。

■ 尖閣切手を発行せよ! ■

中・台の理不尽な領有権主張は、国民の怒りを招きました。
なかでも沖縄県民の危機感は尋常ではありません。
琉球切手の発行を職務とする琉球郵政庁の職員たちも思いは同様でした。

「琉球郵政庁が切手発行の権能を有している間に、尖閣諸島を題材にした切手を発行したい」

切手の発行によって、尖閣諸島がまぎれもなく日本の領土であるということを刻印したいとの強い思いが湧き上がってきたのです。
そこで、琉球郵政庁は、尖閣諸島の1つである魚釣島の「地図切手」の発行を計画します。
原画を滞りなく作成し、大蔵省(現・財務省)印刷局に切手の印刷を依頼しました。
印刷も仕上がり、あとは琉球郵政庁に向けて発送を待つばかりという時、その地図切手の存在が外務省の知るところとなりました。
すると、何と外務省は
「中国や台湾などを刺激する」
として、発行禁止を強く要求してきたのです。

この時期、中・台は不当な領有権主張をますます強めており、日米両政府は両国を刺激しないように神経質になっていました。
「こんな時に尖閣諸島を描いた切手などとてもじゃないが発行できない。
これで外交がこじれてしまったら一大事だ」
ということでしょう。

沖縄はまだ返還されておらず、米国統治下にあったのですから、琉球政府に対する外務省の要求は米国への内政干渉にあたります。
しかし、順調な沖縄返還を望んでいた米国政府が目くじらを立てなかったため、琉球政府は切手の発行を断念せざるを得ませんでした。

これに切歯扼腕したのが、郵券課長の浜元暁男氏でした。
「尖閣をテーマとした切手発行を、なぜ日本政府は嫌がるのか。
長い目で見るなら、ここで尖閣の領有権を明確にしておく方が得策ではないか!」


琉球郵政庁郵券家鳥(当時)浜元暁男

海軍予科練出身で剛胆な性格だった浜元課長は、
「それならば、せめて尖閣を舞台にした『海洋シリーズ切手』を発行したい
と思いました。

折しも復帰3年後の昭和50年(1975年)に「沖縄国際海洋博覧会」の開催が決定されていました。
この海洋博記念を名目にして海洋シリーズを企画し、これに尖閣諸島を盛り込めば、復帰直前の混乱の中で当局のチェックをごまかせるのではないか、と考えたのです。

「日本政府が尖閣切手を認めないというなら、巧妙にカムフラージュして、推し進めるだけだ。
政府は『琉球政府が勝手に発行した』とすればよい」

と浜元課長は強気です。
こうして、郵政庁首脳幹部だけの「極秘プロジェクト」による尖閣切手の発行計画がスタートしました。

ただし、万一、情報が洩れて日本政府の知ることになったら、すべては水泡に帰してしまいます。
プロジェクトの遂行には、細心の注意が必要でした。

海洋シリーズ切手は、次の3つで構成されることになりました。
•第1集:「島と海」(昭和47年3月21日発行)
•第2集:「珊瑚礁」(同年3月30日発行)
•第3集:「海と海鳥と島」(同年4月14日発行)

第1集「島と海」は、実は「魚釣島と尖閣の海」の図柄を計画しました。

「海上にまっすぐ突き出た岩石の島だけでは、どこの島なのか誰も分からない。
何か言われたら、最後まで知らぬ存ぜぬで押し通すぞ」
と浜元課長。
切手の原画を描くためには写真が必要です。
そこで、峻険な岸壁が鋸立する魚釣島の雄姿を撮影するために、2人の部下を2週間の出張に出しました。

しかし、天候不順で部下たちは尖閣諸島までたどり着けず、写真を撮ることができませんでした。
この秘策は失敗…、やむをえず第1集の題材は「慶良間諸島の海と島」に変更となりました。

切手の図案を思案しているところに大ニュースが飛び込んできました。
昭和46年(1971年)、琉球大学調査団が、国指定の特別天然記念物で絶滅危惧種のアホウドリが尖閣諸島の南小島で生息しているのを発見したのです。
この種は地球上で、伊豆諸島の鳥島(東京都)にしか生息していないとされていたので、沖縄中が沸きました。

そこで、浜元課長は
「アホウドリを描いた切手を発行することで間接的に尖閣諸島が沖縄に属していることを主張できる」
と考えました。


浜元課長は第3集の原画を画家の安次富(あしとみ)長昭氏(現・琉球大名誉教授)に依頼します。
そして、描く島は「尖閣諸島の南小島」、描く鳥は「アホウドリなり」と注文をつけました。

安次富長昭(現・琉球大名誉教授)

しかし、珍しい鳥なので安次富画伯は実物を見たことがありません。
そこで、郵政庁長だった渡嘉敷真球(しんきゅう)氏がじきじきにアトリエまでアホウドリの剥製を届けにきます。
さらに、アホウドリを発見した琉球大調査団団長の池原貞雄教授から、この時に撮った写真を借り、調査団メンバーの新納(にいろ)義馬教授から尖閣諸島の情景を詳細に聞き取りました。

尖閣諸島の紺青の海、波洗う峻険な南小島の断崖、その上空を舞い、岩場で戯れるアホウドリ。
安次富画伯は資料を元に描いていきます。
完成した「海と海鳥と島」、すなわち「尖閣の海とアホウドリと南小島」の原画は、目が覚めるような鮮やかさで素晴らしい出来映えでした。

第3集の極秘プロジェクトは着々と進展しました。
切手審議会を問題なくパスし、大蔵省印刷局へ送付、日本政府からのクレームもなく250万部が印刷されました。
尖閣切手は、誰もが一般的な「海と鳥と島」が描かれていると疑いませんでした。
浜元課長の作戦は功を奏しました。

そして、4月14日、尖閣切手は予定通り発行されました。
それは沖縄の祖国復帰、すなわち琉球郵政庁消滅の1ヶ月前のことでした。

尖閣諸島の研究者・国吉真古(まさふる)氏は次のように述べています。
「現政府の尖閣への対応は期待外れ。
当時の職員は領土に対する強い思いがあったはずだ。
多くの人々に認識を深めてほしい」

身の危険も顧みず、尖閣諸島を守るために極秘プロジェクトを成功させた浜元氏をはじめとする琉球郵政庁の職員たち。その愛国心・愛郷心の確かさに心打たれます。
南国風の色鮮やかな尖閣切手は、尖閣諸島の日本領有を主張し続けているのです。

《終わり》

切手の説明書。海洋シリーズ第3集『海と海鳥と島』
切手の説明書。海洋シリーズ第3集『海と海鳥と島』

〈参考資料〉
◆尖閣諸島文献資料編纂会
『尖閣研究ー高良学術調査団資料集上下』(データム・レキオス)2007年
◆読売新聞2012年5月11日
「『尖閣』秘した琉球切手」
◆琉球新報 2010年11月1日
論壇「尖閣諸島の琉球政府切手 日本政府の〝干渉〟で幻に」

琉球新報 2010年11月1日



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道徳「一輪の花から始まった絆」アーレイ・バーク

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今日は「集団生活に必要なものは何か」を考えよう。
もちろん、それは「日本人の伝統的精神」から学ぶことになりますよ。
徳目は 4-(4)「集団の一員としての自覚」
(2-(2)「おもいやり」で捉えても良いお話だと思います)


《授業開始》
◆ 発問 1~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

これは五輪招致のプレゼンテーションの時の写真です。
滝川クリステルさんは、何と言っているでしょうか?

◆ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

お・も・て・な・し

答え:「お・も・て・な・し」

●有名なシーンですね。生徒もみんな知っていました。
ここでまったく無関係のような質問をします。

◆ 発問 2~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ところで、「トモダチ作戦」を覚えていますか?
知っていることをどうぞ。

◆ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


●これがほとんどの生徒は知りませんでした。
最初から知らないのか、忘れちゃったのか…。
適度にヒントを出しながら、説明しました。
ヒント:「東日本大震災」「アメリカ軍」「救援」

在日米軍が助けてくれたことは、ある程度知っていました。
よかった。

では、【資料1】を読みましょう。

【資料1】◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

今日は、外国人を感動させた日本人の「おもてなしの心」について勉強しましょう。

平成23年(2011)3月11日、日本に甚大な被害をもたらした東日本大震災がおこりました。
震災

自衛隊や警察、消防が必死の救援活動を繰り広げました。
この時、すかさずアメリカ軍が「トモダチ作戦」と名付けた日本への復興支援を開始し、瓦礫(がれき)の除去や多くの救援物資を届けてくれました。
実は、この話の裏には60年以上も前におきたひとつの物語があったのです。

それは、大東亜戦争(太平洋戦争)の終結からわずか5年後、昭和25年(1950)9月のことです。
まだ戦争の傷跡が残る日本に、一人のアメリカ人がやってきました。
アメリカ海軍の提督、アーレイ・バークです。

バーク

バークは駆逐艦乗りです。
巨大な戦艦を追い回す駆逐艦乗りには、日米ともに猛将といわれた人が多くいました。
バークもその一人です。
バークは大東亜戦争の中でも、日米合わせて9万人以上もの犠牲を出した激戦「ソロモン海戦」で日本軍の脅威となった男です。
そのバークが、敗戦国日本を支配する占領軍の海軍副長として、アメリカから派遣されてきたのです。
それは、「朝鮮戦争」勃発の直後でした。

バークが東京の帝国ホテルにチェックインした時のことです。
従業員「バーク様、お荷物をお持ちいたします」
バーク「やめてくれ。最低限のこと以外は、私に関わるな!」
実は、バークは筋金入りの日本人嫌いでした。
親友を日本軍の真珠湾攻撃によって失い、血みどろの戦いで多くの仲間や部下を失っていたからです。
戦争中、バークの心には、敵である日本人への激しい憎悪が燃えていました。

「日本人を一人でも多く殺すことなら重要だ。
日本人を殺さないことならば、それは重要でない」
という訓令を出したほどでした。
また、公の場で日本人を
「ジャップ」「イエロー・モンキー」
と差別的に呼び、露骨に日本人を蔑みました。
したがって、どれだけ日本人の従業員が話しかけても無視しました。
「腹立たしい限りだ! 黄色い猿どもめ!」

日本に来てから1ヶ月ほどしたある日のこと。
「なんて殺風景な部屋なんだ!」
ベッドと鏡台とイスだけの部屋を見て、せめてもの慰みにと、バークは一輪の花を買ってきてコップに差しました。

このあと、この花が意外な展開をたどることになります。
翌日、バークが夜勤から戻ってみると、
コップに差した花が、花瓶に移されていたのです。

◆(資料ここまで)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

◆ 発問 3~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

花瓶に移されていた花を見たバークは、
このあとどうしたと思いますか?

◆ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


●想像でどうぞ。
○生徒:「ほめた」「お礼を言った」「やっぱり怒った」など。

●【資料2】で確認しましょう。

【資料2】◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

バークはフロントに行き、苦情を言いました。

バーク「なぜ、余計なことをした。誰が花を花瓶に移せと言った!?」
従業員「恐れ入りますが、ホテルではそのような指示は出しておりません」
バーク「何だって?」

この時は誰が花瓶に移したのか分からなかったのです。
さらに数日後…。
何と花瓶には昨日まではなかった新しい花が生けられていました。
「いったい誰がこんなことを…」

花はその後も増え続け、部屋を華やかにしていきました。
バークは再びフロントへ行きました。
「私の部屋に花を飾っているのが誰なのか、探してくれ」

調べた結果、花を飾っていた人物が分かりました。
それは、バークの部屋を担当していた女性従業員でした。
彼女は自分の乏しい給料の中から花を買い、バークの部屋に飾っていたのです。

それを知ったバークは、彼女を問い詰めました。
「君は、なぜこんなことをしたのだ?」
「花がお好きだと思いまして」
「そうか。ならば、君のしたことにお金を払わねばならない。受け取りたまえ」
と、彼女にお金を渡そうとするバーク。
ところが彼女は…
「お金は受け取れません。私はお客様にただ居心地よく過ごしていただきたいと思っただけなんです」
「どういうことだ!?」

アメリカではサービスに対して謝礼(チップ)を払うのは当たり前のことです。
しかし、彼女はお金を受け取りません。
このあと、彼女の身の上を聞いたバークは驚きました。
彼女は戦争未亡人で、夫はアメリカとの戦いで命を落としていたのです。
しかも、彼女の亡き夫も駆逐艦の艦長で、ソロモン海戦で乗艦と運命を共にしたのでした。
それを聞いたバークは、
「御主人を殺したのは、私かもしれない」
と、彼女に謝りました。
ところが彼女は毅然としてこう言ったのです。
「提督。提督と夫が戦い、提督が何もしなかったら提督が戦死していたでしょう。
誰も悪いわけではありません」

バークは考え込みました。
「自分は日本人を毛嫌いしているというのに、彼女はできる限りのもてなしをしている。
この違いは、いったい何なんだ…!?」

      ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

のちに、バークは次のように言っています。
「彼女の行動から日本人の心意気と礼儀を知った。
日本人の中には、自分の立場から離れ、公平に物事を見られる人々がいること。
また、親切に金で感謝するのは日本の礼儀に反すること。
親切には親切で返すしかないこと、を学んだ。
そして、自分の日本人嫌いが正当なものか考えるようになった」


こうして、バークの日本人に対する見方は一変したのです。
折りしも朝鮮戦争は激しさを増していました。
バークは一刻も早くアメリカ軍の日本占領を終わらせ、日本の独立を回復するようにアメリカ政府に働きかけるようになりました。
加えて、日本の独立と東アジアの平和を維持するために、日本海軍の再建を説きました。
まだ終戦5年後ですから、アメリカ人の大多数が反日感情を持っている中です。
バークは根気強く説いてまわり、ついに海上自衛隊を作ることに成功したのでした。

その後、バークはアメリカ海軍のトップである作戦部長に就任します。
3期6年間も作戦部長を務めたのは海軍史上でバークだけです。
バークは、最新鋭の哨戒機P2Vを16機、小型哨戒機S2F-1を60機も海上自衛隊に無償で供給しました。

1961年、海上自衛隊の創設に力を尽くした功で、バークは日本から勲一等旭日大綬章(最高の勲章)を贈られました。

1991年、バークは96歳で亡くなります。
各国から多くの勲章を授与されたバークですが、葬儀の時に胸に付けられた勲章は、日本の勲章ただ一つ。
それは本人の遺言でした。
そのため、ワシントンの海軍博物館にあるバーク大将の展示には、日本の勲章だけが抜けたままになっています。

◆(資料ここまで)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

◆ 発問 4~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

【資料2】を読んで、感心したことは何ですか?
3つ以上、書きましょう。

◆ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


●女性従業員の偉さはもちろんですが、素直に自分を変えたバークも偉いとの声もあり。
今も墓の中でバークが日本の勲章を付けていることに感銘の声も出ました。

●でも、この話はまだ続きがあったんです。
歴史の数奇な繋がりをどうぞ。

【資料3】◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

平成23年3月11日、東日本を巨大地震が襲いました。
この戦後最大の国難に際して、在日アメリカ軍は直ちに「OPERATIONTOMODACHI=トモダチ作戦」を発動しました。

トモダチ作戦1

このトモダチ作戦で、もっとも早く被災地に着いたのが、
原子力空母ロナルド・レーガンです。

トモダチ作戦2

本来、韓国に向かう任務で移動中でしたが、艦長の独断で日本の救援に駆けつけたのです。
その艦長の名は、海軍大佐トム・バーク
そう、あのアーレイ・バークの孫です。

トム・バーク

バーク大佐は、ヘリコプターのパイロット出身でしたから、空母のことは副長に任せ、自分は救援物資を積んだヘリを操縦して、避難所を飛びまわったそうです。

このような自然災害が発生した場合、世界中でどんな光景が見られるか知っていますか…。
住民たちによる食料の取り合いが始まります。
こうなると、ヘリコプターといえども危険で着陸できないそうです。
何と着陸した途端、被災民が銃をぶっ放して、食料を取りに来ることもあるといいます。
したがって、たいていは低空からの空中投下になるそうです。

しかし、東北地方は、どの避難所にもヘリが着陸しやすいように、ヘリ着陸の目印「H」が書いてありました。
ヘリが着陸すると、被災民が荷降ろしを手伝いました。
終わったら、全員がお礼を言って見送ってくれます。


トモダチ作戦3

これには、世界各地で救援活動をしてきたバーク大佐も驚いたそうです。
「東北地方では、一件の略奪も殺し合いもなかった」
と軍の機関紙『星条旗』に書いています。
さらに、住民たちは必ず
「ここはこれだけで良いから、別の避難所に持って行ってくれ」
と言いました。
そんなことを言われたことも、日本だけだったそうです。

人間、極限状況にある時ほど、その本性があらわれる
と言いますね。

トム大佐は帰国後、日本で経験した驚きの出来事を家族に話しました。
もし、バーク大将が生きていたら、
「そうじゃろう。じーちゃんが日本好きになった訳がわかったじゃろう」
などと応えたでしょうね。

時が流れていくと、変わってしまったり、失われてしまうものがある中で、変わらないのが日本人の「人を思いやる心」です。
いつまでも護り伝えていきたいですね。


◆(資料ここまで)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

◆ 発問 5~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

今日のお話を通して、学んだことや感想を書きましょう。
日本人の伝統的精神「人を思いやる気持ち」は、
今の自分に照らしてどうですか。

◆ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


《授業終わり》

●「おもてなし」や「思いやりの心」とは、温かい「人間愛」の精神であることをわからせたい。
●実感としては、「親切」をしたり、されたりした時の気持ちを思い浮かべてみよう。
●震災時の日本人の米軍に対する態度は
助けられる時の『おもてなし』の態度
(変な言い方ですが)
と言えるのではないか。
●日本の「伝統的精神」の良さを知り、
日本人の一員として、他人に対して思いやりの心を持とうとする態度
を育てましょう。

トモダチ作戦4

【参考資料】 勉強になりました! ありがとうございました。
■『海の友情―米国海軍と海上自衛隊』阿川尚之 (中公新書)
■ビーバップ!ハイヒール「半世紀の時を超えて…『一輪の花』から始まった絆の物語」
  ABC(朝日放送)2013年放送



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国の守り方を考える⑤

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国の守り方を考える⑤
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
自衛官125d7d7793e9a7b9248cfc208cef6b1f

◆ まとめ ◆  

ここまで見てきてわかったこと…。
それは、我が国の軍である自衛隊には、警察や消防隊にすら認められている規定が設けられていないということです。

「自衛隊」自体が憲法に書かれていません。
だから、警察以下の扱いなのでしょうか?
こんな軍隊って、他の国ではあるのでしょうか?
ありません

でも、これって根本的におかしいと思います。
国家・国民を守る任務を負っている軍隊が、任務ができないように手足を縛られたままなのですから。

「集団的自衛権」に関して、議論が進んでいますね。
これにはいろいろな考え方があって、
「戦争ができる国にしようというのか」という反発を表明する人もいますし、また逆に、
「あいまいな規定では、実効性がなく、国民の生命も守れない」
と心配する声も上がっています。

政治家の皆さんには、我々国民の生命や財産、自由や権利、それを保障する国家の独立をしっかり守れる法整備をしてもらいたいです。
国会審議を注目してみていきましょう。

《以上、授業おわり》


◆ 補足を一言 ◆

この授業は、決して自衛隊を揶揄しているわけではない。
私の心情は、むしろその反対である。
こんないい加減な法制や不安定な状況の中であっても、常に国防の努力を続けている自衛隊の諸氏には感謝と尊敬の念を持っている。
私は、一旦緩急あれば、たとえ法律で禁じられていても、自衛官は超法規的に行動して国民を守ってくれると信じている。
それは、東日本大震災における自衛官たちの無私の行動から確信している。

でも本当は、自衛官に法律違反をさせてはいけない。
軍人の勇気に報いるのは「名誉」をもってするのが、古今東西の常識だろう。
「自衛隊の勇気ある行動」と
「法的に、これでは国を守れない」
という現実は別の話である。

こうなったのも、政治家を始め、これまでずっと国防に無関心でいた国民の責任ではなかろうか。
自分の国は自分たちで守るという国際常識を日本人が忘却してきたこと。
これが大きな原因である。

********************

◎国防教育について

日本人の多くが自虐史観に絡め取られたままでいて、国民として国への帰属意識が希薄であることが指摘されて久しい。
希薄だから、国を守るという発想が出てこない。
だから、軍事を考えない。
これで何十年も来てしまった。
よく無事だったものだ。
したがって、若者には「国家観」を持てる教育を施し、日本国民としての自覚を持たせなければならない。

一方、国防に関する広報活動の充実が望まれる。
ゆるキャラでも萌えキャラでも、かっこいい映像でも良い。
大震災や救助活動、海外派遣などで、感動的な話が山ほどある。
すべて事実である。
遠慮なく紹介するべきである。
しかも良い動画でやることが大事だ。

********************

◎政治と国防について

国際政治はバランスオブパワーの関係で成り立っている。
軍事は政治の延長線上にある。
したがって、軍事を避ける人は、政治を正しく導けないだろう。

だから、さまざまな政策は軍事の視点からも立案されるべきである。
経済もそうだが、教育もそうあるべきだ。

国防意識が皆無の政治家が、得意になっていられるのは異常だ。
そういう意味で日本は未熟である。

********************

◎重い課題

1日も早く、自衛隊がポジティブリストではなく、ネガティブリストで動ける軍隊になってほしい。
いや、そうならねば日本が危ない。

しかし、どうやったら、自衛隊が警察としての位置づけではなく、軍として位置づけられるのか。
これまでずっとポジでやってきてしまった。
しかも、法律を膨大に積み重ねてきてしまっている。
どのようにして、その転換を図ればいいのか。

自衛隊を「国防軍」と名前を変えただけではダメなんじゃないか。
ネガで動けないなら、それは軍隊ではないからだ。
どんな方法があるのか、勉強したい。

2月7日の産経新聞「産経抄」にたいへん考えさせられる文章が載っていた。
ISILの日本人人質事件に関する考察である。
以下に転載してこの項を終わりたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【産経抄】2015.2.7
わがことながら日本人は、敗戦から70年という歳月をかけて本当に優しくなった。
「イスラム国」という名のならず者集団に空軍パイロットが焼き殺されたヨルダンは、さっそく報復爆撃を始め、指揮官を含む55人以上を殺戮(さつりく)した。
▼ヨルダンでは、「なぜ2人も殺された日本がともに戦わないのか」という声が高まっているという。
日本には憲法の制約があって云々(うんぬん)、と説明してもまず理解されぬだろう。
▼憎しみの連鎖を断たねばならぬ、というご高説は一見もっともらしい。
後藤健二さん自身も数年前、「憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」とつぶやいている。
▼だからといって処刑直前も彼はそんな心境だった、とどうしていえようか。
助けにいった湯川遥菜さんが斬首されたときの写真を持たされ、家族に脅迫メールを送られ、心ならずも犯人側のメッセージを何度も読まされた後藤さんの心境は想像を絶する。
▼仇(かたき)をとってやらねばならぬ、というのは人間として当たり前の話である。
第一、「日本にとっての悪夢の始まりだ」と脅すならず者集団を放っておけば、第二、第三の後藤さんが明日にも出てこよう。
日本国憲法には、「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼して、わが国の「安全と生存を保持しようと決意した」とある。
「イスラム国」のみならず、平和を愛していない諸国民がいかに多いことか。
この一点だけでも現行憲法の世界観が、薄っぺらく、自主独立の精神から遠く離れていることがよくわかる。
護憲信者のみなさんは、テロリストに「憲法を読んでね」とでも言うのだろうか。
命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない。




more...

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国の守り方を考える④

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国の守り方を考える④
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
自衛官39d18de6

有事シミュレーション解説(2)

問13
武器が使用できるのは
→【正当防衛と緊急避難のみ】

自衛官の武器使用基準は
「明らかな身の危険を感じるまでは、
武器を使ってはならない」
(自衛隊法0条)
となっています。
警察官と同様、正当防衛と緊急避難のみに限られます。

ですから、敵兵を発見したからといってすぐさま発砲することはできないのです
  ↓具体的には、こうです。

[武器使用の手順(4段階)]
(2000年のイラクPKOで適用)
1.口頭で警告 「武器を捨てなさい」
2.銃を構える 「撃っちゃうよ」
3.威嚇射撃  「捨てないと、こうだぞ」(バンッ)
4.危害射撃  (バンッ)

さすがに、敵に銃口を向けられたら、発砲して良いことになっています。
しかし、これでは、いくつがあっても足りません。

問14
【軍医がいても手術はできない】


応急処置以外は、医療設備の基準を満たした正規の病院でなければ手術をしてはいけません(『医療法』)。
その場に医者がいて、器具があっても手術をしたら違法行為なのです。

問15
【安全なところにだけ行けます】


現行法では、自衛隊機は輸送の安全が確保されている場合に派遣できることになっています(自衛隊第84条の3)。
言い換えれば、自衛隊は安全な場所にしか行けません

また、避難している日本人に空港や港まで来てもらわなくてはなりません。
なぜなら、自衛隊ができのは「輸送」だけで、「救出」ではないからです
救出は軍事作戦を伴うので、想定されていないのです。
これでは国民を守れません。

しかも、武器が使えるのは、こちらが襲撃されて「正当防衛・緊急避難」の時だけでしたね。
したがって日本人を救出してくれた他国の兵士が襲われたりしても、ただ見ているだけになります。

※最近の動向として、
「在外邦人の陸上輸送可能に 自衛隊法改正案、閣議決定(朝日新聞2013年月19日付)」
とあります。

問16
【敵地先制攻撃は、自衛権の行使】


敵国がミサイルの発射を準備した時、そのミサイル基地を先制攻撃できます
「敵地先制攻撃」といい何と自衛権の範囲内でできるのです。
これは、政府の統一見解です。
本当ですよ。
  ↓ ほらね
我が国がミサイル攻撃された場合、
「座して死を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだとうふうにはどうしても考えられない」
1956年 鳩山一郎首相の答弁。

しかし、日本から先に攻撃をしないという専守防衛を国是にしている限り、本当に実行できるのか、とても不安です。

問17
ミサイルの迎撃は…
→【確実になるまで待て】


ミサイルが我が国の領土に達する前に撃ち落とさないと、落下物でも甚大な被害が出るでしょう。
しかし、現行法では、飛んでくるミサイルが「確実に日本の領土に落ちる」場合だけ、迎撃できることになています。

ミサイルが、日本上空を飛び越えて、グアムやハワイの米軍基地の方に行くかもしれない場合は、撃ち落とせません。
なぜなら、現在禁じられている「集団的自衛権」の行使になるからです

となると、ミサイルの目標が明確になった時には、もう遅いかもしれませんね。
そもそも外国には「ミサイル破措置命令」など存在しません。
危険なミサイルから国民を守るのは当然だからです



■なぜ、こんな事になるんだろう?

◆ポジティブリストとネガティブリスト

日本の防衛法制は「ポジリスト」方式です(警察法の体系はこれ)。
この方式では、行動は原則禁止で
「○○の場合は××できる」
と、平時では法律で定められた行動以外は禁止
されています。
しかも、いちいち厳しい手続きが必要です。

したがって、目の前で敵軍が破壊活動をしていても防衛出動命令が出なければ、一発の弾も撃つことはできないのです

一方、諸外国の軍隊は「ネガリスト」方式です。
行動は原則自由で、国際法で「○○をしてはならない」と、
禁止されていること以外は、何でもできます

世界で唯一、国際法で動けない軍隊である自衛隊は、どのようにして国家国民を守るというのでしょうか!?


◆命令待って、国滅ぶ?

どこまでが「平時」で、どこからが「有事(戦争状態)」なのでしょうか?
日本は「平時」と「有事」を次のように分けていましたね。(→問2の解説)

s-防衛出動

このような規定になっていることを国民の多くは知らないようです。
したがって、突然、敵軍が上陸してきたら自衛隊は、先のシミュレーションのような行動しかとれないのです。

防衛出動命令さえ出れば、各問いの多くのことは対処できるはずです。
(ただし、一部は知事の承認などが必要)

しかし、防衛出動発令には国会の承認が必要で、時間がかかります。
緊急の場合は、防衛出動の下命後、直ちに国会の承認を求めることも可能なのですが、果たして間に合うんでしょうか?

〔防衛出動命令が出るまでの流れ〕
1.首相が「対処方針案」を作成
2.安全保障会議に諮問する
3.安保会議内に事態対処専門委員会を開いて専門家の意見を聞く
4.安保会議の答申を受けて、対処方針を閣議で決定する
5.国会を開いて承認を得る(衆参)
6.自衛隊に防衛出動の命令を発する
7.自衛隊出動
8.武器の使用については別に「武器使用命令」が必要


外国には「防衛出動の発令」などというものはありません。
現地司令官の判断で対応します。

国家の主権と人命が脅かされる緊急事態だから当然です。
もたもたしていたら時すでに遅し、ということになります。

◆「交戦規定」がない

諸外国は、相手の敵対行為の程度に応じて、軍隊がどのように対応するか、段階的に定めています
この行動基準を交戦規定(ROE)といいます。
定められた規定に従って対応するので、軍の先走りを防ぐ役割も果たしているのです。

日本はポジリストゆえに、さぞ綿密な規定が定められているかと思いきや、さにあらず。
日本には交戦規定はありません
憲法で「交戦権」自体を否定しているからです

我が国の防衛体制は、「こと」がおきるたびに法律を整備してきました。
しかし、「100の事態に対応する100の法律があっても、101番目の事態には対応できない」という名言があります。
想定外のことが起きたらアウトです。

ポジリストで、防衛出動命令が出ない限り「自衛権」さえ行使できない日本
これでは、国を守れません。

四ヶ月の赤ちゃんを見つけた自衛官の笑顔
《続きます。あと一回》

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国の守り方を考える③

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国の守り方を考える③
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
ヘリ

有事シミュレーション解説

問1
領空に「国籍不明機接近」
→【諸外国並の対応ができる!(ことになっている)】


領空侵犯機に対して、我が自衛隊機の規則は諸外国並の手順になっています。
以下参照。

[国籍不明機を領空近くで発見したら]
1.スクランブルをかける。
2.領空に近づいたら、警告する。
3.領空に侵入したら警告射撃をする。
 この時、武器使用命令を出すのは、方面司令官。
 これで反転したら、領空を出るまで追尾する。
4.侵入を続けて、領土上空に達したら、強制着陸させる。
5.これに従わず、人命や建物に被害が出ると思われる時には、撃墜できる。


※我が国は、侵入機を撃墜したことがありません。一度だけ警告射撃をしたことがあります。その時の司令官はずいぶん逡巡し、結局、領空を出たところでやっと射撃を許可しただけでした。

※今後、果たして空自が撃墜できるかどうかは、まったくわかりません

問2
自衛隊機が、攻撃を受けている海保の巡視船に遭遇
→【海保を救出できない】


平時では、空自による救出を許可する法律がありません。
ということは、空自は見ていることしかできません

自衛隊の最高指揮官たる首相から
「防衛出動」が命じられると「戦時」になります
そうでない限り、自衛隊は個別的自衛権すら行使できないのです
これは国際常識上、驚くべき事です。

s-防衛出動

したがって、「もう見ていられない」と、勇敢なパイロットが外国船を攻撃したら、法律違反で処罰される可能性があります(傷害罪か殺人罪でしょうね?)。

問3
警告を無視して挑発する不審船を目の前に、海上自衛隊は
→【臨検ができない】


「海上警備行動」とは、海保では対応できなくなった時、防衛大臣が発令します。
その行動は「警察官職務執行法」の範囲内です。
この場合、以下の手順を踏んで、臨検することになります。

[船舶検査活動法(平成12年)による臨検]
1.船の航行を監視する
2.呼びかけや信号弾で自己の存在を示す
  ※各国は信号弾が1〜2発で、残りは実弾。
    日本はすべて信号弾!
3.相手の船の名称、船籍、出発地、目的地、積み荷など必要事項を問い合わせる
   「あなたは誰? 工作員? どこ行くの?」
4.停船を求め、船長の同意を得て乗り移り、検査する
     「停まりなさい。臨検するよ」
5.停船しない場合、船長に目的地の変更を求める
      「あっちに行きなさい」
6.目的地変更に応じない場合、説得する
        「えーかげんにしなさいよー」
7.説得に応じない場合、接近して追尾する
          「待てェ〜」

となります。
これで、まともな臨検ができるのでしょうか???

※実を言うと、海保は相手が民間船でなければ実力行使できないことになっています(海上保安庁法20条)。
だから、尖閣を脅かす中国公船に対して「警告と退去要求」しかしないのですね。

【有事への流れ】
海保が対応できない
  ↓
海上警備行動(防衛大臣が発令)
  ↓
防衛出動(首相が発令)=有事



問4
横にいる海上保安庁の巡視船がロケット砲攻撃を受けた
→【見てるだけ】


海保の巡視船を武力で守るためには、例によって防衛出動命令が出されていなければなりませんでしたね。
ですから、海上警備行動では、弾ひとつ撃てません。
ほとんど何もできないのです。
現行法を守っていたら、海保を見殺しにすることになりかねません。
自衛官は、交戦権のない状態で、命をかけて現場に出動しているのです
これでは国を守れません。

問5
反撃するにしても
→【死傷者は出してはならない】


向こうから攻撃してくれば、武器を使えます。
正当防衛です。
こてんぱんにやっつけてやりたいところですが、現行法では「人に危害を加えてはならない」とされています
相手が軍人でも工作員でも海賊であっても、死傷させてはならないのです。
人命尊重ですね。

※最近の動向として、「領域警備法」の制定が議論されています。今後、どうなるでしょうか。

問6・7
緊急事態で現場に向かう時にも
→【自衛隊は信号を守る】


我が自衛隊の車両は、緊急事態でも信号を守ります。
何せ、まだ平時ですから(←防衛出動命令が出ていない)。

『道路交通法』で、一般車両に優先できるのはパトカー、救急車、消防車などの緊急車両だけです。
喫緊の場合、軍隊がパトカーに先導してもらうことになるでしょう。

また、停電で信号が作動しない時、交通整理をするのは警察です。
自衛隊には権限がないのです。
渋滞にはまっていて、敵に上陸を許してしまうなんて…。
これでは国は守れません。

問8
原発の警備
→【お巡りさんの仕事】


現行法では、原発の警備は警察と海上保安庁が担当します。
これで対応できなくなり、首相が「治安出動」を発令したら、自衛隊も警備に加わることができます
しかし、治安出動は、国会の承認が必要です。

承認されるの待っていたら、緊急事態に間に合わず、甚大な被害が発生する可能性が大です。

※最近の動向として、
「原発警護に自衛隊出動 政府、月内にも改正案提出(産経新聞2013年4月8日付)」
とありますが、話は進んでいないようです。

問9
武装工作員に対して
→【警察で対処できるのか】


武装工作員が不法行為をした場合、第1に対処するのは警察です。
この時の自衛隊の任務は
「状況の把握」
「自衛隊施設の警備強化」
「警察官の輸送」
なのです。
(平成22年度防衛白書「武装工作員などへの対処の基本的考え方」)

このように
「日本に侵入しても武力行使されないし、せいぜい警察に捕まる程度」
ですから、日本は工作員の天国ですね。

問10
【私有地に入ってはいけない】


私有地は緊急時であっても、地主の許可なく立ち入れません。
防衛出動の発令下でなければ平時ですから、住居不法侵入です。
侵略軍は何の制約もなく行動できるのに、自衛隊は私有地を避けて回り道をすることになりそうです。
ちなみに消防隊員は、火事の時、どこでも通行が可能です(『消防法』)。
これでは国を守れません。

問11・12
【スムーズに陣地が作れない】


敵の侵攻が予想されていても、『海岸法』『河川法』『森林法』『自然公園法』に則り、面倒な手続きをして許可がおりないと陣地すら作れません。

たとえば、海岸は公共地なので、役所に行って使用の申請・許可が必要です。
立ち木などを処分するには、知事の許可が必要ですし、指揮所などの建築物も『建築基準法』で制約を受けます。
場所・高さ・強度などの基準をクリアしなければなりません。
今の規定では、戦況に応じた陣地構築は不可能でしょう。

ちなみに、消防隊はどこに指揮所を作ってもいいことになっています。
これでは国を守れません。


《続きます》




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国の守り方を考える②

国の守り方を考える②
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
s-海自対潜哨戒機P-3C

(各問いの答えを1〜2から選びなさい)

問8 
この混乱の最中、原子力発電所に敵武装工作員がテロを仕掛けるとの情報が入った。
原発が破壊されたら一大事だ。
その時、自衛隊は‥‥。

1.一刻を争う事態だ。直ちに急行し、原発を警備せよ。

2.原発の警備は「警察の仕事」だ。権限がないので何もできないし、行ってはならない。

問9
すると、今度は『武装工作員が町で破壊活動をしている』との通報あり。
その時、自衛隊は‥‥。

1.大至急、現場に隊員を派遣せよ。武装工作員を排除し、住民の安全を確保すべし。

2.武装工作員の不法行為に対処するのは「警察の仕事」と決まっている。お巡りさんにまかせておこう。

問10
ようやく敵の上陸地点に到着した我が精鋭たち。
部隊を展開するには、民家の庭や畑などを通過しなければならない。
その時、自衛隊は‥‥。

1.自衛隊は、敵の虚を突き、民家の庭や畑を突っ切って進撃。散兵戦の花と散れ。

2.地主の許可を得ずに敷地を通行すれば、不法侵入罪に問われるぞ。早く持ち主を探せ。

問11
侵攻が予想される方面に、陣地を作らなければならない。
守るに堅く、攻めるに有利な海岸が見つかった。
その時、自衛隊は‥‥。

1.時間は限られている。すぐに陣地を築いて、敵の襲撃に備えよ。

2.海岸は公共地だ。役所に行って申請せよ。許可がおりたら陣地を作ろう。

問12
戦闘を指揮するために、指揮所を作れ。
急いで、周辺の立ち木を伐採する必要がある。
その時、自衛隊は‥‥。

1.任務遂行の妨げになる立ち木を処分し、早急に指揮所を築くべし。

2.立ち木などを処分するには、知事の許可が必要だ。今すぐ、知事に申請せよ。

問13
索敵中の自衛隊員。
すると、銃を持った敵兵5名と遭遇。
向こうもこちらの存在に気付き、目があった。
その時、自衛隊は‥‥。

1.撃たなければ撃たれる。迷わず引き金を引け。

2.武器を捨てるように警告し、人命を傷つけないように威嚇射撃をせよ。

s-陸自

問14
敵の攻撃は猖獗を極め、我が自衛隊にも負傷者が多数発生した。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ただちに野戦病院を設置して、資格を持った医官によって手術をするべし。

2.手術は正規の病院でなければしてはならない。『医療法』違反だ。急いで病院を探せ。

問15
この頃、外務省に「C国に居住している日本人が人質にとられる恐れがある」との情報が入った。
敵国に捕らわれている人質を救出できる実力を持った組織は、自衛隊しかあるまい。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ことは緊急を要する。自衛隊機をC国に飛ばし、特殊部隊を投入して同胞を救出せよ。

2.C国の国内は安全な状況とは思えない。危ないので、自衛隊を派遣してはならない。

問16
C国を監視する偵察衛星が、弾道ミサイル発射の兆候を探知した。
C国の独裁者は、日頃から
「日本に無慈悲な鉄槌を下し、東京を火の海にする」
と放言してきた。
その時、自衛隊は‥‥。

1.我が国は専守防衛。こちらから先に外国を攻撃することは、決して許されない。

2.敵地のミサイル基地を先制攻撃しなければ、甚大な被害が予測される。空爆して無力化せよ。

s-イージス艦「ちょうかい」から発射された海上配備型迎撃ミサイル(SM3)=昨年11月(海上自衛隊提供)090125

問17
なかなか決断できない我が政府。
そうこうするうちに、C国は弾道ミサイルを発射した。
飛翔するミサイルを陸上から迎撃するパトリオット3(PAC3)の出番だ。
すでに防衛大臣から「ミサイル破壊措置命令」が発令されている。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ミサイルが我が領土に達する前に撃ち落とさないと、落下物でも大きな被害が出る。タイムリミットは10分間だ。即座に撃ち落とせ。

2.こっちの方向に飛んでくるが、ミサイルの目標地点が日本かどうか不明だ。実験かも‥‥。目標地点が明確になるまで発射してはならない。


我が自衛隊は、みごと弾道ミサイルを撃破した。
ここに至って、腰の重い政府も、C国との戦争を決し、「防衛出動命令」を発令。
自衛隊全軍による猛反撃が展開され、さしものC国軍も侵略を断念した。

見よ、東海の空明けて
武勇に勝る自衛隊、ついに敵軍を撃退す! 万歳!
(問題おわり)
陸自-20110318


■ 答えは → なんとなんと…すべて「
   (ホントにウソじゃないですよ)

《続きます。次回は詳細な解説です》

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国の守り方を考える①

国の守り方を考える①
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


数回にわたって「国防教育」を紹介したいと思います。

国防の学習なんて言うと、目くじらを立てる先生がいらっしゃいます。
しかし、申し訳ありませんが、国際的には至極当然の教育であります。
自国の国防の現状を正しく認識することは、主権者たる国民として必須のことです。
だって、国防には「国家の命運」と「国民の生命・財産」がかかっているのですから。
国防を学ぶことは、何も特別、右に寄ってるとかではなくて、公民として常識の範囲内です。

「諸国民の公正と信義」を信頼してたって国を守れないって言うことぐらい、今日の中学生はよくわかっております。
もうとっくに生徒に乗り越えられちゃっている先生もいますよね。

ということで、我が国の国防の現状を学習していきます。
すると、実際、大変なことがわかってきてしまうのです。
つまり、あれほど高い士気と練度と武力を保持しているというのに、いざという時に
「国民を守れない自衛隊」の姿
が浮かび上がってくるのです。

ウソーって思う人もいるでしょう。
最初、私もそう思いました。
能書きが長くなりました。
では、授業開始です。

注:
以下のシミュレーションは、2013年(平成25年)時点での法制にしたがって作っています。
現在、多少の改善は見られましたが、大きなところはあまり変わっておりません(涙)。


『集団的自衛権をめぐってマスコミでは、騒がしい状況ですね。
我が国の防衛にたずさわる重要な組織が自衛隊です。
いざというとき、私たちの祖国日本、そして私たちの生命や財産、そして自由や人権といった価値観をも守ってくれるのが自衛隊ですね。

今日の授業は、そんな頼りになる自衛隊が、
どんな時にどんなことができるのか
また、何ができないのか
そして、自衛隊はどのような位置づけになっているのか
ということを学びましょう。次のプリントをやります』

■(プリントはじめ)■■■■■■■■■■■■■■■■■■

皆さん、大変です。
C国が、我が国を侵略しようとしているのだそうです。
天に代わりて不義を討つ、忠勇無双の我が自衛隊は、国家・国民を守るためにどんなことができるのでしょうか。

次の各問いの答えを1〜2から選びなさい。

問1
我が国の領空に「国籍不明機接近」の報、入る。
我が航空自衛隊の強者はスクランブルをかけ、侵犯機を捉えた。
退去の警告を発するも、ついに領土上空に侵入。
敵は、強力なミサイルを搭載している模様。
その時、航空自衛隊は ‥‥。

1.まずは警告射撃。それでも侵犯を続けたら、人命や建物に被害が出る前に即座に撃墜する。

2.今は戦時ではない。司令官が「武器使用命令」を出していないので、追いかけるだけだ。

s-空自

問2
侵犯機は我が領空を脱し、飛び去った。
その帰り、航空自衛隊機が領海上空を飛行中、海上保安庁の巡視船が、C国の軍艦や巡視船から攻撃されているところに遭遇。
その時、自衛隊は‥‥。

1.これを見捨てて置かりょうか。海保を救出せよ。大損害が出る前に攻撃開始。

2.自分が攻撃されたわけではないので、手出し無用だ。残念だが、見てるだけ。

問3
同じ頃、別の領海内では、C国と見られる不審船10隻が海上保安庁の警告を無視して、挑発を続けていた。
やりたい放題で、まったく停船の気配はない。
海保では手に余るとして、ついに「海上警備行動」が発令され、海上自衛隊が現場に急行。
その時、海上自衛隊は‥‥。

1.停船命令に従わなければ、警告射撃。それでも無視したら、直ちに撃沈する。

2.停船命令に従わなければ、目的地の変更を求める。これを無視したら、説得する。

問4
調子にのった不審船は、併走する海上保安庁の巡視船に向け、ロケット砲を発射。
さらに自動小銃を乱射した。
その時、自衛隊は‥‥。

1.海保を助けろ。こっちもいつ撃たれるかわからない。直ちに攻撃態勢に入り、撃沈すべし。

2.自分がやられたわけではないので、攻撃はできない。一発も撃ってはならない。

問5
さらに調子にのった不審船は、領海の外に逃れつつ、我が自衛隊艦船に向けても武力攻撃を仕掛けてきた。その時、自衛隊は‥‥。

1.正当防衛で反撃だ。不審船に壊滅的打撃を与え、安全を確保せよ。

2.正当防衛で反撃だ。ただし、人に危害を加えてはならず、決して死傷させてはならない。

海自

問6
これまでの空・海の動きは敵の陽動作戦だったのか。
突如「C軍、上陸す!」の報あり。
至急、情報を集めよ。
陸上自衛隊の精鋭は、車両にて現地に急行。
すると、前方の信号が赤に変わった。
その時、陸上自衛隊は‥‥。

1.信号は無視してそのまま進んでも良い。緊急事態なのだ。当然だろう。

2.自衛隊車両はパトカーなどの緊急車両ではない。信号が青になるまで待ちましょう。

問7
現地に向かう自衛隊。
すると敵特殊部隊の工作か、一帯が停電で信号機が消え、大渋滞になっている。
その時、自衛隊は‥‥。

1.このままでは敵の侵略を許してしまう。すみやかに交通整理をして前進だ。

2.自衛隊員はお巡りさんではないので、交通整理はできない。道がすくまで辛抱強く待て。

問8
この混乱の最中、原子力発電所に敵武装工作員がテロを仕掛けるとの情報が入った。
原発が破壊されたら一大事だ。
その時、自衛隊は‥‥。

1.一刻を争う事態だ。直ちに急行し、原発を警備せよ。

2.原発の警備は警察の仕事だ。権限がないので何もできないし、行ってはならない。

《続きます》

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服部 剛

Author:服部 剛
授業づくりJAPAN横浜《中学》の代表・服部剛です。中学校社会科教師です。
授業づくりJAPANは、授業実践を通して「国を思い、先人に感謝し、卑怯をにくむ日本人」「日本人の自由と真実を守るために戦うことのできる日本人」を育てます。
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