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カルタゴの平和

過ぐる3月28日、「日本教師塾」の勉強会で飯田橋に行ってきました。
メインは高橋史朗教授の「W・G・I・P(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)」。
久々に頭んなかがフル回転しました。
高橋先生に先立って、千葉の渡辺尚久先生の模擬授業「第二のカルタゴ」も勉強になりました。
ふと思い当たったのが、20年くらい前に作った読み物資料です。
この話はまだまだ使えるなぁと思った次第です。たいへん今日的な問題なのです。
渡辺先生の素晴らしい授業を知りたい人はぜひ「日本教師塾」に参加しましょう。
惜しみなく教えてくださいます。

以下、読み物資料~歴史でも公民でも使えます。

 <カルタゴとローマ帝国>

◆ローマ帝国
●ヘレニズム文化華やかなりしB.C3世紀、都市国家ローマがイタリア半島を統一。

●B.C2世紀頃から西欧、アフリカ、西アジアに領土拡大。
  ・B.C264年ポエニ戦争で勝利。地中海の覇権を握る。
  ・B.C60年第1回三頭政治(ポンペイウス、クラッスス、シーザー)
          →シーザーの独裁
          →ブルータスに暗殺される 「ブルータス、お前もか!」
  ・B.C49年第2回三頭政治
(オクタビアヌス<シーザーの養子>、アントニウス、レピドゥス)
 ・「アクチウムの戦い」
        オクタビアヌスがアントニウスと、その妃エジプト女王クレオパトラに勝利
          → エジプトを征服!
●地中海沿岸に強大なローマ帝国を建設(B.C27年、初代皇帝オクタビアヌス)

◆ポエニ戦争…カルタゴの滅亡

カルタゴ(BC814~BC146年)はアフリカ北部(現在のチュニジア)に位置し、地中海貿易で栄えた経済大国でした。
ローマと第一次~第三次ポエニ戦争まで三度戦い、そして滅亡しました。
なぜ、カルタゴは滅んだのでしょうか。

カルタゴが滅亡した原因:第二次ポエニ戦争で敗れた後、ローマと結んだ条約
  条約の内容
  ・カルタゴの平和と安全はローマが保障する
  ・自衛軍は持ってもいいが、ローマの許可なしで戦争をしてはならない

     =「交戦権」の否定である。

このことの持つ意味がいかに重大なものかを知っていたのは、第二次ポエニ戦争で活躍した闘将ハンニバルでした。
第二次ポエニ戦争後、ローマへの賠償金支払いを嘆く元老院(政治をするところ)で、彼は一人、笑いを浮かべていました。
その態度を激しく非難された彼はこう言いました。

「心が目に見えるなら、私の笑いが不幸のゆえに逆上したせいであることがわかるであろう。
武器が没収され、戦争が禁じられた時にこそ嘆くべきだったのだ。
なぜなら、この痛手は取り返しのつかないものだからである。
ローマが平和を保障してくれるなどと信じないほうがいい。
国は身体と同じく外に対して強く見えても内から衰弱していく。
しかし、我々はそれに気づかない。
自分の金を失うのは苦痛に違いないが、国の損失とはそんなものではない。
今や、我が国は武装した諸部族のただ中に丸裸で放り出されているではないか。
それを誰一人嘆こうとはしないではないか。
金を失うことなど小さな不幸に過ぎないことを諸君はやがて思い知るだろう」


カルタゴ政府はハンニバルの言葉を理解せず、彼を追放しました。
そして、ローマに従順にしたがい、経済活動のみに専念しました
その結果、カルタゴは…。
わずか10年後には賠償金を一括して払えるほどの経済大国に復活します。
武力を放棄したまま自国の安全をローマに頼み、その費用をすべて経済活動にまわしたのでカルタゴは短期間で経済大国に成長したのです。

まさにこの世の春でした。(カルタゴの平和

ところが…、半世紀後、かつての植民地ヌミディアがカルタゴの領土を侵略してきます。
あわてたカルタゴはローマに戦争の許可を願い出ますが、ローマはこれを拒否しました。
しかし、いたたまれずカルタゴはついにヌミディアと開戦してしまいます。
ローマはこの時を待っていたのでした。
すかさず、条約違反としてカルタゴに宣戦布告! 
驚いたカルタゴは武器を捨て、ひたすらローマに謝罪します。
しかし、ローマが許すはずはありません。
とうとうカルタゴ国民もローマとの戦争を決意しますが、時すでに遅し。
カルタゴは跡形もなく焼き滅ぼされました。
第二次ポエニ戦争敗北後、55年目のことでした。

→ このカルタゴ・・・今のどこかの国と似ていませんか?

《資料おわり》

さて、今や…

「WIN―ギャラップ・インターナショナル」(本部スイス・チューリヒ)は2015年3月18日、64カ国・地域で実施した世論調査の結果を発表
「自国のために戦う意思」があるかどうか
  ↓
日本が11%で最低。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/dragoner/20150324-00044155/

これを見るに、すでに日本は、「危機に立つ国家」(1983年、レーガン米国大統領の「教育の卓越に関する国家委員会」が発表した報告書タイトル)になっているのではありませんか。

このまま座してカルタゴと同じ運命をたどってもいいのですか。
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国の守り方を考える⑤

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国の守り方を考える⑤
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
自衛官125d7d7793e9a7b9248cfc208cef6b1f

◆ まとめ ◆  

ここまで見てきてわかったこと…。
それは、我が国の軍である自衛隊には、警察や消防隊にすら認められている規定が設けられていないということです。

「自衛隊」自体が憲法に書かれていません。
だから、警察以下の扱いなのでしょうか?
こんな軍隊って、他の国ではあるのでしょうか?
ありません

でも、これって根本的におかしいと思います。
国家・国民を守る任務を負っている軍隊が、任務ができないように手足を縛られたままなのですから。

「集団的自衛権」に関して、議論が進んでいますね。
これにはいろいろな考え方があって、
「戦争ができる国にしようというのか」という反発を表明する人もいますし、また逆に、
「あいまいな規定では、実効性がなく、国民の生命も守れない」
と心配する声も上がっています。

政治家の皆さんには、我々国民の生命や財産、自由や権利、それを保障する国家の独立をしっかり守れる法整備をしてもらいたいです。
国会審議を注目してみていきましょう。

《以上、授業おわり》


◆ 補足を一言 ◆

この授業は、決して自衛隊を揶揄しているわけではない。
私の心情は、むしろその反対である。
こんないい加減な法制や不安定な状況の中であっても、常に国防の努力を続けている自衛隊の諸氏には感謝と尊敬の念を持っている。
私は、一旦緩急あれば、たとえ法律で禁じられていても、自衛官は超法規的に行動して国民を守ってくれると信じている。
それは、東日本大震災における自衛官たちの無私の行動から確信している。

でも本当は、自衛官に法律違反をさせてはいけない。
軍人の勇気に報いるのは「名誉」をもってするのが、古今東西の常識だろう。
「自衛隊の勇気ある行動」と
「法的に、これでは国を守れない」
という現実は別の話である。

こうなったのも、政治家を始め、これまでずっと国防に無関心でいた国民の責任ではなかろうか。
自分の国は自分たちで守るという国際常識を日本人が忘却してきたこと。
これが大きな原因である。

********************

◎国防教育について

日本人の多くが自虐史観に絡め取られたままでいて、国民として国への帰属意識が希薄であることが指摘されて久しい。
希薄だから、国を守るという発想が出てこない。
だから、軍事を考えない。
これで何十年も来てしまった。
よく無事だったものだ。
したがって、若者には「国家観」を持てる教育を施し、日本国民としての自覚を持たせなければならない。

一方、国防に関する広報活動の充実が望まれる。
ゆるキャラでも萌えキャラでも、かっこいい映像でも良い。
大震災や救助活動、海外派遣などで、感動的な話が山ほどある。
すべて事実である。
遠慮なく紹介するべきである。
しかも良い動画でやることが大事だ。

********************

◎政治と国防について

国際政治はバランスオブパワーの関係で成り立っている。
軍事は政治の延長線上にある。
したがって、軍事を避ける人は、政治を正しく導けないだろう。

だから、さまざまな政策は軍事の視点からも立案されるべきである。
経済もそうだが、教育もそうあるべきだ。

国防意識が皆無の政治家が、得意になっていられるのは異常だ。
そういう意味で日本は未熟である。

********************

◎重い課題

1日も早く、自衛隊がポジティブリストではなく、ネガティブリストで動ける軍隊になってほしい。
いや、そうならねば日本が危ない。

しかし、どうやったら、自衛隊が警察としての位置づけではなく、軍として位置づけられるのか。
これまでずっとポジでやってきてしまった。
しかも、法律を膨大に積み重ねてきてしまっている。
どのようにして、その転換を図ればいいのか。

自衛隊を「国防軍」と名前を変えただけではダメなんじゃないか。
ネガで動けないなら、それは軍隊ではないからだ。
どんな方法があるのか、勉強したい。

2月7日の産経新聞「産経抄」にたいへん考えさせられる文章が載っていた。
ISILの日本人人質事件に関する考察である。
以下に転載してこの項を終わりたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【産経抄】2015.2.7
わがことながら日本人は、敗戦から70年という歳月をかけて本当に優しくなった。
「イスラム国」という名のならず者集団に空軍パイロットが焼き殺されたヨルダンは、さっそく報復爆撃を始め、指揮官を含む55人以上を殺戮(さつりく)した。
▼ヨルダンでは、「なぜ2人も殺された日本がともに戦わないのか」という声が高まっているという。
日本には憲法の制約があって云々(うんぬん)、と説明してもまず理解されぬだろう。
▼憎しみの連鎖を断たねばならぬ、というご高説は一見もっともらしい。
後藤健二さん自身も数年前、「憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」とつぶやいている。
▼だからといって処刑直前も彼はそんな心境だった、とどうしていえようか。
助けにいった湯川遥菜さんが斬首されたときの写真を持たされ、家族に脅迫メールを送られ、心ならずも犯人側のメッセージを何度も読まされた後藤さんの心境は想像を絶する。
▼仇(かたき)をとってやらねばならぬ、というのは人間として当たり前の話である。
第一、「日本にとっての悪夢の始まりだ」と脅すならず者集団を放っておけば、第二、第三の後藤さんが明日にも出てこよう。
日本国憲法には、「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼して、わが国の「安全と生存を保持しようと決意した」とある。
「イスラム国」のみならず、平和を愛していない諸国民がいかに多いことか。
この一点だけでも現行憲法の世界観が、薄っぺらく、自主独立の精神から遠く離れていることがよくわかる。
護憲信者のみなさんは、テロリストに「憲法を読んでね」とでも言うのだろうか。
命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない。




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国の守り方を考える④

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国の守り方を考える④
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
自衛官39d18de6

有事シミュレーション解説(2)

問13
武器が使用できるのは
→【正当防衛と緊急避難のみ】

自衛官の武器使用基準は
「明らかな身の危険を感じるまでは、
武器を使ってはならない」
(自衛隊法0条)
となっています。
警察官と同様、正当防衛と緊急避難のみに限られます。

ですから、敵兵を発見したからといってすぐさま発砲することはできないのです
  ↓具体的には、こうです。

[武器使用の手順(4段階)]
(2000年のイラクPKOで適用)
1.口頭で警告 「武器を捨てなさい」
2.銃を構える 「撃っちゃうよ」
3.威嚇射撃  「捨てないと、こうだぞ」(バンッ)
4.危害射撃  (バンッ)

さすがに、敵に銃口を向けられたら、発砲して良いことになっています。
しかし、これでは、いくつがあっても足りません。

問14
【軍医がいても手術はできない】


応急処置以外は、医療設備の基準を満たした正規の病院でなければ手術をしてはいけません(『医療法』)。
その場に医者がいて、器具があっても手術をしたら違法行為なのです。

問15
【安全なところにだけ行けます】


現行法では、自衛隊機は輸送の安全が確保されている場合に派遣できることになっています(自衛隊第84条の3)。
言い換えれば、自衛隊は安全な場所にしか行けません

また、避難している日本人に空港や港まで来てもらわなくてはなりません。
なぜなら、自衛隊ができのは「輸送」だけで、「救出」ではないからです
救出は軍事作戦を伴うので、想定されていないのです。
これでは国民を守れません。

しかも、武器が使えるのは、こちらが襲撃されて「正当防衛・緊急避難」の時だけでしたね。
したがって日本人を救出してくれた他国の兵士が襲われたりしても、ただ見ているだけになります。

※最近の動向として、
「在外邦人の陸上輸送可能に 自衛隊法改正案、閣議決定(朝日新聞2013年月19日付)」
とあります。

問16
【敵地先制攻撃は、自衛権の行使】


敵国がミサイルの発射を準備した時、そのミサイル基地を先制攻撃できます
「敵地先制攻撃」といい何と自衛権の範囲内でできるのです。
これは、政府の統一見解です。
本当ですよ。
  ↓ ほらね
我が国がミサイル攻撃された場合、
「座して死を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだとうふうにはどうしても考えられない」
1956年 鳩山一郎首相の答弁。

しかし、日本から先に攻撃をしないという専守防衛を国是にしている限り、本当に実行できるのか、とても不安です。

問17
ミサイルの迎撃は…
→【確実になるまで待て】


ミサイルが我が国の領土に達する前に撃ち落とさないと、落下物でも甚大な被害が出るでしょう。
しかし、現行法では、飛んでくるミサイルが「確実に日本の領土に落ちる」場合だけ、迎撃できることになています。

ミサイルが、日本上空を飛び越えて、グアムやハワイの米軍基地の方に行くかもしれない場合は、撃ち落とせません。
なぜなら、現在禁じられている「集団的自衛権」の行使になるからです

となると、ミサイルの目標が明確になった時には、もう遅いかもしれませんね。
そもそも外国には「ミサイル破措置命令」など存在しません。
危険なミサイルから国民を守るのは当然だからです



■なぜ、こんな事になるんだろう?

◆ポジティブリストとネガティブリスト

日本の防衛法制は「ポジリスト」方式です(警察法の体系はこれ)。
この方式では、行動は原則禁止で
「○○の場合は××できる」
と、平時では法律で定められた行動以外は禁止
されています。
しかも、いちいち厳しい手続きが必要です。

したがって、目の前で敵軍が破壊活動をしていても防衛出動命令が出なければ、一発の弾も撃つことはできないのです

一方、諸外国の軍隊は「ネガリスト」方式です。
行動は原則自由で、国際法で「○○をしてはならない」と、
禁止されていること以外は、何でもできます

世界で唯一、国際法で動けない軍隊である自衛隊は、どのようにして国家国民を守るというのでしょうか!?


◆命令待って、国滅ぶ?

どこまでが「平時」で、どこからが「有事(戦争状態)」なのでしょうか?
日本は「平時」と「有事」を次のように分けていましたね。(→問2の解説)

s-防衛出動

このような規定になっていることを国民の多くは知らないようです。
したがって、突然、敵軍が上陸してきたら自衛隊は、先のシミュレーションのような行動しかとれないのです。

防衛出動命令さえ出れば、各問いの多くのことは対処できるはずです。
(ただし、一部は知事の承認などが必要)

しかし、防衛出動発令には国会の承認が必要で、時間がかかります。
緊急の場合は、防衛出動の下命後、直ちに国会の承認を求めることも可能なのですが、果たして間に合うんでしょうか?

〔防衛出動命令が出るまでの流れ〕
1.首相が「対処方針案」を作成
2.安全保障会議に諮問する
3.安保会議内に事態対処専門委員会を開いて専門家の意見を聞く
4.安保会議の答申を受けて、対処方針を閣議で決定する
5.国会を開いて承認を得る(衆参)
6.自衛隊に防衛出動の命令を発する
7.自衛隊出動
8.武器の使用については別に「武器使用命令」が必要


外国には「防衛出動の発令」などというものはありません。
現地司令官の判断で対応します。

国家の主権と人命が脅かされる緊急事態だから当然です。
もたもたしていたら時すでに遅し、ということになります。

◆「交戦規定」がない

諸外国は、相手の敵対行為の程度に応じて、軍隊がどのように対応するか、段階的に定めています
この行動基準を交戦規定(ROE)といいます。
定められた規定に従って対応するので、軍の先走りを防ぐ役割も果たしているのです。

日本はポジリストゆえに、さぞ綿密な規定が定められているかと思いきや、さにあらず。
日本には交戦規定はありません
憲法で「交戦権」自体を否定しているからです

我が国の防衛体制は、「こと」がおきるたびに法律を整備してきました。
しかし、「100の事態に対応する100の法律があっても、101番目の事態には対応できない」という名言があります。
想定外のことが起きたらアウトです。

ポジリストで、防衛出動命令が出ない限り「自衛権」さえ行使できない日本
これでは、国を守れません。

四ヶ月の赤ちゃんを見つけた自衛官の笑顔
《続きます。あと一回》

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国の守り方を考える③

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国の守り方を考える③
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
ヘリ

有事シミュレーション解説

問1
領空に「国籍不明機接近」
→【諸外国並の対応ができる!(ことになっている)】


領空侵犯機に対して、我が自衛隊機の規則は諸外国並の手順になっています。
以下参照。

[国籍不明機を領空近くで発見したら]
1.スクランブルをかける。
2.領空に近づいたら、警告する。
3.領空に侵入したら警告射撃をする。
 この時、武器使用命令を出すのは、方面司令官。
 これで反転したら、領空を出るまで追尾する。
4.侵入を続けて、領土上空に達したら、強制着陸させる。
5.これに従わず、人命や建物に被害が出ると思われる時には、撃墜できる。


※我が国は、侵入機を撃墜したことがありません。一度だけ警告射撃をしたことがあります。その時の司令官はずいぶん逡巡し、結局、領空を出たところでやっと射撃を許可しただけでした。

※今後、果たして空自が撃墜できるかどうかは、まったくわかりません

問2
自衛隊機が、攻撃を受けている海保の巡視船に遭遇
→【海保を救出できない】


平時では、空自による救出を許可する法律がありません。
ということは、空自は見ていることしかできません

自衛隊の最高指揮官たる首相から
「防衛出動」が命じられると「戦時」になります
そうでない限り、自衛隊は個別的自衛権すら行使できないのです
これは国際常識上、驚くべき事です。

s-防衛出動

したがって、「もう見ていられない」と、勇敢なパイロットが外国船を攻撃したら、法律違反で処罰される可能性があります(傷害罪か殺人罪でしょうね?)。

問3
警告を無視して挑発する不審船を目の前に、海上自衛隊は
→【臨検ができない】


「海上警備行動」とは、海保では対応できなくなった時、防衛大臣が発令します。
その行動は「警察官職務執行法」の範囲内です。
この場合、以下の手順を踏んで、臨検することになります。

[船舶検査活動法(平成12年)による臨検]
1.船の航行を監視する
2.呼びかけや信号弾で自己の存在を示す
  ※各国は信号弾が1〜2発で、残りは実弾。
    日本はすべて信号弾!
3.相手の船の名称、船籍、出発地、目的地、積み荷など必要事項を問い合わせる
   「あなたは誰? 工作員? どこ行くの?」
4.停船を求め、船長の同意を得て乗り移り、検査する
     「停まりなさい。臨検するよ」
5.停船しない場合、船長に目的地の変更を求める
      「あっちに行きなさい」
6.目的地変更に応じない場合、説得する
        「えーかげんにしなさいよー」
7.説得に応じない場合、接近して追尾する
          「待てェ〜」

となります。
これで、まともな臨検ができるのでしょうか???

※実を言うと、海保は相手が民間船でなければ実力行使できないことになっています(海上保安庁法20条)。
だから、尖閣を脅かす中国公船に対して「警告と退去要求」しかしないのですね。

【有事への流れ】
海保が対応できない
  ↓
海上警備行動(防衛大臣が発令)
  ↓
防衛出動(首相が発令)=有事



問4
横にいる海上保安庁の巡視船がロケット砲攻撃を受けた
→【見てるだけ】


海保の巡視船を武力で守るためには、例によって防衛出動命令が出されていなければなりませんでしたね。
ですから、海上警備行動では、弾ひとつ撃てません。
ほとんど何もできないのです。
現行法を守っていたら、海保を見殺しにすることになりかねません。
自衛官は、交戦権のない状態で、命をかけて現場に出動しているのです
これでは国を守れません。

問5
反撃するにしても
→【死傷者は出してはならない】


向こうから攻撃してくれば、武器を使えます。
正当防衛です。
こてんぱんにやっつけてやりたいところですが、現行法では「人に危害を加えてはならない」とされています
相手が軍人でも工作員でも海賊であっても、死傷させてはならないのです。
人命尊重ですね。

※最近の動向として、「領域警備法」の制定が議論されています。今後、どうなるでしょうか。

問6・7
緊急事態で現場に向かう時にも
→【自衛隊は信号を守る】


我が自衛隊の車両は、緊急事態でも信号を守ります。
何せ、まだ平時ですから(←防衛出動命令が出ていない)。

『道路交通法』で、一般車両に優先できるのはパトカー、救急車、消防車などの緊急車両だけです。
喫緊の場合、軍隊がパトカーに先導してもらうことになるでしょう。

また、停電で信号が作動しない時、交通整理をするのは警察です。
自衛隊には権限がないのです。
渋滞にはまっていて、敵に上陸を許してしまうなんて…。
これでは国は守れません。

問8
原発の警備
→【お巡りさんの仕事】


現行法では、原発の警備は警察と海上保安庁が担当します。
これで対応できなくなり、首相が「治安出動」を発令したら、自衛隊も警備に加わることができます
しかし、治安出動は、国会の承認が必要です。

承認されるの待っていたら、緊急事態に間に合わず、甚大な被害が発生する可能性が大です。

※最近の動向として、
「原発警護に自衛隊出動 政府、月内にも改正案提出(産経新聞2013年4月8日付)」
とありますが、話は進んでいないようです。

問9
武装工作員に対して
→【警察で対処できるのか】


武装工作員が不法行為をした場合、第1に対処するのは警察です。
この時の自衛隊の任務は
「状況の把握」
「自衛隊施設の警備強化」
「警察官の輸送」
なのです。
(平成22年度防衛白書「武装工作員などへの対処の基本的考え方」)

このように
「日本に侵入しても武力行使されないし、せいぜい警察に捕まる程度」
ですから、日本は工作員の天国ですね。

問10
【私有地に入ってはいけない】


私有地は緊急時であっても、地主の許可なく立ち入れません。
防衛出動の発令下でなければ平時ですから、住居不法侵入です。
侵略軍は何の制約もなく行動できるのに、自衛隊は私有地を避けて回り道をすることになりそうです。
ちなみに消防隊員は、火事の時、どこでも通行が可能です(『消防法』)。
これでは国を守れません。

問11・12
【スムーズに陣地が作れない】


敵の侵攻が予想されていても、『海岸法』『河川法』『森林法』『自然公園法』に則り、面倒な手続きをして許可がおりないと陣地すら作れません。

たとえば、海岸は公共地なので、役所に行って使用の申請・許可が必要です。
立ち木などを処分するには、知事の許可が必要ですし、指揮所などの建築物も『建築基準法』で制約を受けます。
場所・高さ・強度などの基準をクリアしなければなりません。
今の規定では、戦況に応じた陣地構築は不可能でしょう。

ちなみに、消防隊はどこに指揮所を作ってもいいことになっています。
これでは国を守れません。


《続きます》




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国の守り方を考える②

国の守り方を考える②
有事シミュレーション「その時、自衛隊は!」


《続きです》
s-海自対潜哨戒機P-3C

(各問いの答えを1〜2から選びなさい)

問8 
この混乱の最中、原子力発電所に敵武装工作員がテロを仕掛けるとの情報が入った。
原発が破壊されたら一大事だ。
その時、自衛隊は‥‥。

1.一刻を争う事態だ。直ちに急行し、原発を警備せよ。

2.原発の警備は「警察の仕事」だ。権限がないので何もできないし、行ってはならない。

問9
すると、今度は『武装工作員が町で破壊活動をしている』との通報あり。
その時、自衛隊は‥‥。

1.大至急、現場に隊員を派遣せよ。武装工作員を排除し、住民の安全を確保すべし。

2.武装工作員の不法行為に対処するのは「警察の仕事」と決まっている。お巡りさんにまかせておこう。

問10
ようやく敵の上陸地点に到着した我が精鋭たち。
部隊を展開するには、民家の庭や畑などを通過しなければならない。
その時、自衛隊は‥‥。

1.自衛隊は、敵の虚を突き、民家の庭や畑を突っ切って進撃。散兵戦の花と散れ。

2.地主の許可を得ずに敷地を通行すれば、不法侵入罪に問われるぞ。早く持ち主を探せ。

問11
侵攻が予想される方面に、陣地を作らなければならない。
守るに堅く、攻めるに有利な海岸が見つかった。
その時、自衛隊は‥‥。

1.時間は限られている。すぐに陣地を築いて、敵の襲撃に備えよ。

2.海岸は公共地だ。役所に行って申請せよ。許可がおりたら陣地を作ろう。

問12
戦闘を指揮するために、指揮所を作れ。
急いで、周辺の立ち木を伐採する必要がある。
その時、自衛隊は‥‥。

1.任務遂行の妨げになる立ち木を処分し、早急に指揮所を築くべし。

2.立ち木などを処分するには、知事の許可が必要だ。今すぐ、知事に申請せよ。

問13
索敵中の自衛隊員。
すると、銃を持った敵兵5名と遭遇。
向こうもこちらの存在に気付き、目があった。
その時、自衛隊は‥‥。

1.撃たなければ撃たれる。迷わず引き金を引け。

2.武器を捨てるように警告し、人命を傷つけないように威嚇射撃をせよ。

s-陸自

問14
敵の攻撃は猖獗を極め、我が自衛隊にも負傷者が多数発生した。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ただちに野戦病院を設置して、資格を持った医官によって手術をするべし。

2.手術は正規の病院でなければしてはならない。『医療法』違反だ。急いで病院を探せ。

問15
この頃、外務省に「C国に居住している日本人が人質にとられる恐れがある」との情報が入った。
敵国に捕らわれている人質を救出できる実力を持った組織は、自衛隊しかあるまい。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ことは緊急を要する。自衛隊機をC国に飛ばし、特殊部隊を投入して同胞を救出せよ。

2.C国の国内は安全な状況とは思えない。危ないので、自衛隊を派遣してはならない。

問16
C国を監視する偵察衛星が、弾道ミサイル発射の兆候を探知した。
C国の独裁者は、日頃から
「日本に無慈悲な鉄槌を下し、東京を火の海にする」
と放言してきた。
その時、自衛隊は‥‥。

1.我が国は専守防衛。こちらから先に外国を攻撃することは、決して許されない。

2.敵地のミサイル基地を先制攻撃しなければ、甚大な被害が予測される。空爆して無力化せよ。

s-イージス艦「ちょうかい」から発射された海上配備型迎撃ミサイル(SM3)=昨年11月(海上自衛隊提供)090125

問17
なかなか決断できない我が政府。
そうこうするうちに、C国は弾道ミサイルを発射した。
飛翔するミサイルを陸上から迎撃するパトリオット3(PAC3)の出番だ。
すでに防衛大臣から「ミサイル破壊措置命令」が発令されている。
その時、自衛隊は‥‥。

1.ミサイルが我が領土に達する前に撃ち落とさないと、落下物でも大きな被害が出る。タイムリミットは10分間だ。即座に撃ち落とせ。

2.こっちの方向に飛んでくるが、ミサイルの目標地点が日本かどうか不明だ。実験かも‥‥。目標地点が明確になるまで発射してはならない。


我が自衛隊は、みごと弾道ミサイルを撃破した。
ここに至って、腰の重い政府も、C国との戦争を決し、「防衛出動命令」を発令。
自衛隊全軍による猛反撃が展開され、さしものC国軍も侵略を断念した。

見よ、東海の空明けて
武勇に勝る自衛隊、ついに敵軍を撃退す! 万歳!
(問題おわり)
陸自-20110318


■ 答えは → なんとなんと…すべて「
   (ホントにウソじゃないですよ)

《続きます。次回は詳細な解説です》

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服部 剛

Author:服部 剛
授業づくりJAPAN横浜《中学》の代表・服部剛です。中学校社会科教師です。
授業づくりJAPANは、授業実践を通して「国を思い、先人に感謝し、卑怯をにくむ日本人」「日本人の自由と真実を守るために戦うことのできる日本人」を育てます。
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